いやーほんと。
去年の10月中旬、僕はウォークマンをなくした。
最後にウォークマンで音楽を聴いたのはどこだっただろうか。
自室だったかな?それともリビング?電車?バス?どこかの施設?
思い出そうとするも、どれも当てはまるような当てはまらないような。
とにかく僕は思いつく限りの場所を探したがウォークマンは見つからなかった。
幸い、その時に組んでいたバンドは耳コピをしなければならない曲が数曲あったのだが、どれもウォークマンをなくす前に耳コピが終わっていた。
すぐに音楽が聴けなくても特には困らないのだ。
「まぁ、そのうち出てくるかな」と楽天的に考えていた。
しかし、その翌朝の家を出なくてはいけない30分前に、僕は大変なことに気づいてしまった。
普段から僕はリビングのカウンターの上にウォークマンを置いていた。
そのカウンターの下には丁度、資源ゴミのゴミ箱がある。
そういえば、昨日ゴミ箱の中を探しただろうか?いや、探していない。(反語)
僕は嫌な想像をしてしまった。
その中に落ちてしまったのではないだろうか?どっふぇ~!大変だ!
僕は焦りに焦った。
すでに資源ゴミが入っていたゴミ袋は捨てられていたのだ。
ごみ捨て場に直行すればいいじゃ~ん?という話なのだが、その日はゼミがあった。
そのゼミは必修であり、遅れると先生は火山の如く叱ってくる。
脅し文句は「遅れてくる人に単位なんてあげられるわけないでしょ?」に違いない!
(実際は先生はとても優しい方です。遅れても連日でなければ大して怒らないです。しかし、そうとわかっていてもなぜか頭の中の先生はめちゃんこ怖いイメージ。)
バスに乗り遅れたら確実に30分以上遅刻してしまう。しかも、僕は何一つ大学に行く準備をしていなかったのだ。
ひぇぇ!
涼しい秋に一人、大量の汗をかきながら支度を終わらせてゴミ捨て場に急ぐ。
「あった。あの袋は間違いなくうちのゴミだ!」
もう自分の家のゴミ袋なんて直感でわかるレベルに神経は研ぎ澄まされていた。
わけではなく、その日は違ったが、だいたいは僕がゴミを捨てに行っていたのでなんとなくでわかっただけである。
とにかく、そこにはうちのゴミ袋があったのだ。
思春期というには年を取りすぎてしまったが、青春街道まっしぐらな僕は人目をちょっと気にしちゃいながらも必死で探した。
エアロスミスにエクストリーム、ジャンゴにウェス、偉大なギターヒーロー達がそこにはたくさん詰まっている。前に友達と一度だけやったライブの音源という黒歴史だってそこにある。
ウォークマンには僕の青春がたくさん入っているのだ。
しかし見つからない。
それだけではない。僕の大好きなパンパカパンツの曲だって入っている。
しかし見つからない。
というか、イヤホン壊れまくってウォークマンに挿してあるイヤホンしか使えるのがない!
しかし見つからない!
見つからないのだ!みっちもさっちもどうにも見つからないのだ!
お前に食わすタンメンどころか、僕のウォークマンはねぇのだ!
僕は探すのを諦めた。バス停へと向かう僕は涙目だ。
新しくウォークマンを買うことは当分ないだろう。
だって、君をいつまでも待っているから。
そんな感じで今日まで頑張って生きてきた。
電車もバスも、近くの人の話し声や車体の軋む音を楽しむようになった。
いや、これはもともとだった。
そういえば、電車やバスでは僕はウォークマンで音楽をあまり聴いてなかったな。うふふ。
今思えばウォークマンと過ごした日々は長かったなぁ。
貴方はもう忘れたかしら?
買ったのは高校の時だもんなぁ。
若かったあの頃、何も怖くなかった。
怖いのは容量がいつ埋まりきってしまうか、と、いつ壊れてしまうかぐらいだった。
もっと容量の大きいやつにしとけばよかったな。
容量少ないせいで南こうせつもDeerhoofも泣く泣くウォークマンから削除したなぁ。
そういえばなんで聴かないのにアジカン入れてたんだろう?
Dragonforceもそういえば飛ばしてばっかで聴いてなかった!
くそ、南こうせつと入れ替えておけばよかった。
うおぉ南こうせつぅぅぅぅぅ!
といった感じで今日まで頑張って生きてきた。
ちょっと苛立ちも起きたがそこは見逃してほしい。
しかし見つからない。
どうしてもだめだったら帰っておいで、ウォークマンよ。
といった感じで終われたら全米が泣いたお話になるのだが、現実はそう上手くはいかないのだ。
それは僕が自室のベッドに向かったときだった。
ベッドカバーがずれていたので直そうと思ったら、普段は携帯の充電器のコードしかないはずなのに今日はやけに黒いコードが多い。
「おいおい、ごきちゃんの触覚とかだったら俺ちゃんないちゃうぜ~?」と怖いのを誤魔化すためによくわからないセリフを口に出しながら、恐る恐る充電器のコードではない方のコードを引張ってみた。
イヤホンじゃ~ん!
あった。
ウォークマンはあった。
いやほんと、見つかってよかった。
いやほんと。
なくしたと思ったときにちゃんとそのへんも探したのに見つからなかったのはいささか不思議だが、見つかってよかった。
ジョー・ペリーもヌーノもサーストンもみんな無事だ。
うふふ~、何から聴こうかな~
ピーピー「充電がありません」
いやーほんと。
どっふぇ~
では。